桂川のデュラスのためのイメージスケッチ
7min, stereo, color, HD
『言いそえれば、わたしは十五歳半だ。
メコン河を一隻の渡し船がとおってゆく。
その映像は、河を横断してゆくあいだじゅう、持続する。
わたしは十五歳半、あの国には季節のちがいはない。
いつも、同じひとつの、暑い、単調な季節、
ここは地球の上の細長い熱帯、春はない、季節のよみがえりはない。』
―『ラマン』マルグリット・デュラス著、清水徹訳、河合文庫より抜粋
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京都市西部地域を流れる桂川。近年の度重なる豪雨と洪水、その唸るような茶色い濁流はいつしか
デュラスの自伝的小説、メコン川を背景にした仏領インドシナのイメージと重なっていきました。
役人に騙され、与えられた不毛の払下げ領地。そこで困窮する一家の肖像。
デュラスは少なくとも三度にわたって繰り返しこの若き時代の情景を描いています。
デュラスのアジアに京都の桂川の風景を接続する映像によるトポグラフィーの試み。
参考文献:
「太平洋の防波堤」マルグリット・デュラス、田中倫郎訳、河出書房新社 1973年
「ラマン」マルグリット・デュラス、清水徹訳、河出文庫 1992年
「北の愛人」マルグリット・デュラス、清水徹訳 、河出文庫 1996年
<出演>
向井 まり、向井 しょうま
<撮影・録音・編集>
三木 由也